Suicaペンギン「俺の評判を知らないのか?」

Suicaペンギンの後任候補が発表された。
3人(匹? 組?)のキャラクターから、人気投票になるらしい。

私の第一印象は「B」。
すでに一番ネタキャラにされている、あの紫のウサギである。

でも、ふと思った。

私たちはJRに、かなり過酷な選択を迫られているのかもしれない……。

キャラクターは、かわいければいいのだろうか。

もちろん、かわいいことは大事だ。
毎日のように駅で見かけるキャラクターなのだから、親しみやすいに越したことはない。

しかし、Suicaのキャラクターには、もっといろいろな仕事が待っている。

駅のポスターに載る。
小さな印刷物にも載る。
電車に乗る。
買い物をする。
旅行にも行く。
ぬいぐるみにもなる。
ときには他社のキャラクターと並ぶ。

そして、おそらくこれから10年、20年と働くことになる。

急に採用面接っぽくなってきた。

そこで今回は、「どの子が一番かわいいか」ではなく、Suicaのキャラクターとして長年働いてもらうなら誰が強いのかを考えてみる。

① 小さく印刷しても分かるか

まずは小さくなっても本人だと分かること。

駅の大きなポスターだけが仕事場ではない。Webサイトの片隅や、小さな案内表示など、キャラクターが使われる場所はいろいろある。

この点で強そうなのがBだ。

とにかく耳がでかい。

顔が小さくなって細部が潰れても、あの特徴的な耳さえ残れば「紫のあいつ」であることが分かる。

Cも、耳とポシェット、そして一緒にいるモグラという特徴がある。

Aはもちろん十分かわいいのだが、小さくなればなるほど「かわいいリス」という一般的な形に近づいてしまいそうだ。

② モノクロでも分かるか

ここでSuicaペンギンの恐ろしさに気づく。

あいつ、最初からほぼ白黒である。

カラー印刷でも、グレースケールでも、たぶんコピー機で何度コピーされてもSuicaペンギンはSuicaペンギンだ。

この条件でもBは強い。

紫という強烈な特徴を失っても、あの耳が残る。単色印刷にされてもシルエットで戦える。

Cもオレンジの部分を白や薄いスクリーントーンに置き換えるなど、モノクロ用のデザインを用意すれば対応できそうだ。

Aはここでも少し不利かもしれない。暖色系の配色を失うと、さらに「リス」という動物そのものに近づく。

③ 遠くから見ても分かるか

これもB。

やっぱり耳がでかい。

なんだかBについて耳の話しかしていない気がするが、仕方がない。でかいのだから。

駅の向こう側にいる。ポスターの隅にいる。ほかの情報に囲まれている。

そんな状況でも、特徴的なシルエットがあることはかなり強い。

AとCも十分認識できるだろうが、「遠くから一瞬見ただけで誰だか分かる」という競技では、Bに分がありそうだ。

④ Suicaの色と仲良くできるか

ここでBに強敵が現れる。

Suicaである。

現在のSuicaといえば、シルバーと黄緑。

そこへ紫色のBを置いてみる。

……仲が悪い。

もちろんデザイン次第でどうにでもなるのだろうが、現行のSuicaの券面やブランドカラーにそのまま馴染むという点では、AやCのほうが扱いやすそうだ。

逆に、キャラクター交代に合わせてSuica全体のデザインも刷新するのであれば話は変わる。

Bを選ぶことは、ひょっとすると「次のSuicaはどういう見た目になるのか」という話とセットなのかもしれない。

⑤ 電車に乗せやすいか

⑥ 買い物させやすいか

ここでCが猛烈に追い上げてくる。

Cには最初からポシェットがある。そして、土の中しか知らないモグラに、いろいろなものを見せてあげるという設定がある。

これ、鉄道会社のキャラクターとしてかなり便利なのではないだろうか。

モグラに桜を見せる。
海を見せる。
雪を見せる。
温泉に連れていく。
駅弁を食べる。

全部、電車に乗る理由になる。

もちろん買い物もできる。

「今日はモグラに何を見せよう」

これだけで年間の広告が作れそうである。

Bは造形が強い。一方でCは、キャラクターの設定そのものが「移動すること」と非常に相性がいい。

⑦ ぬいぐるみにできるか

全員できる。

ここは平和である。

ただしBのでかい耳が、実際の商品になったときにどこまで暴れるのかはちょっと見てみたい。

⑧ 10年、20年経っても古くならないか

これが難しい。

Aは良くも悪くも、とても安心感がある。

丸くて、かわいくて、親しみやすいリス。

ただ、少し意地悪な言い方をすると、2026年に誕生したのに、すでにどこかで長年働いていそうでもある。

金融機関や自治体のキャラクターとして紹介されても、私はたぶん信じる。

Bはかなり記号的なデザインなので、流行が変わっても意外と古びにくそうだ。

Cは造形だけでなく、二人の関係性で物語を作れる。その物語が育っていけば、長く愛される可能性がある。

⑨ ほかのキャラクターと一緒に仕事ができるか

これも意外と大事だと思う。

企業キャラクターは、ときどき他社のキャラクターとコラボする。

たとえばサンリオとコラボしたとしよう。

Bなら、マイメロディ、クロミ、Suicaのウサギ。

ウサギ仲間として並べられるうえに、巨大な耳という特徴があるので、サンリオっぽい絵柄に落とし込んでも本人だと分かりそうだ。

Cもかなり強い。相手のキャラクターにモグラをどこかへ連れていってもらう、という物語まで作れる。

Aはここでも悪くない。

悪くないのだが、相手の絵柄に合わせれば合わせるほど、「かわいいリス」になってしまう危険がある。

コラボで重要なのは、相手の世界に入っても自分でいられることなのかもしれない。

で、結局どの子がいいのか

それぞれの強みはかなり違うのだ。

Aは、安心感がある。
Bは、形が強い。
Cは、物語が強い。

今あるSuicaの世界に自然に入れることを重視するならA。

街中で一目見ただけで「Suicaのキャラクターだ」と分かる、新しいブランドの顔が欲しいならB。

電車に乗ったり、買い物したり、いろいろな場所へ出かけたりする物語をこれから何年も作っていくならC。

つまり、どの子がいいかは、何をさせたいかによる。

ここまで考えて気づいた。

何をさせたいかを知っているのはJRじゃん。

私たちがどれだけ長所を考えたところで、それを使う気がなければ意味がない。

だから結論は――

JRが決めろ。

……人気投票とは。

評価軸 A リス B ウサギ C モグラ
① 小さく印刷しても分かる ○ ◎ ○
② モノクロでも分かる △ ◎ ○
③ 遠目でも分かる △ ◎ ○
④ ブランドカラーと喧嘩しない ◎ △ ○
⑤ 電車に乗せやすい ◎ ○ ◎
⑥ 買い物させやすい ◎ ○ ◎
⑦ ぬいぐるみにできる ◎ ◎ ◎
⑧ 10年20年使っても古びにくい △ ◎ ○〜◎
⑨ 他者の世界観に入っても「自分」でいられる ○ ◎ ◎
総評 優等生型 記号型 物語型

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