嬉しいニュースが入ってきた。
2026年9月28日、元乃木坂46の矢久保美緒がTWIN PLANETに所属することが発表された。
卒業後も芸能活動を続けること自体はすでに明らかになっていたけれど、所属先が決まり、本人のプロフィールが公開されると、これからやろうとしていることが少しずつ具体的に見えてきた。
MC。コスメ・美容。ファッション。YouTube。TikTok。
それを見て最初に思ったのは、「ずいぶん矢久保美緒だな」ということだった。
卒業を機に、新しいキャラクターを作ろうとしているようには見えない。
むしろ乃木坂46で過ごした7年間の中から、「これは次の場所にも持っていける」と思えるものを、一つずつ拾い上げて並べたようなプロフィールだった。
「自分を好きになりたい」と書いていた人
活動初期の矢久保美緒には、自分自身に対する自信のなさを口にする場面がたびたびあった。
2020年のブログでは、その年の目標として「自分を好きになりたい」と書いている。
乃木坂46に加入して、人と比べる機会が増え、それまで以上に自分を認められなくなったとも書いていた。
一方で、かなり早い時期からメイクや髪型を研究していた。
歯列矯正を終えたときには、以前は歯を見せて笑うことに抵抗があったけれど、「自信を持って笑えるようになりました」と報告している。
やがてメイクやファッションは、単なる趣味ではなくなっていった。
自分の理想とする姿を作るためのものになり、乃木坂46での企画やステージにも持ち込まれていく。
ここで「美容を通じて自己肯定感を獲得した」とまとめてしまうのは、たぶん野暮なのだと思う。
そもそも自己肯定なんて、何か一つを達成すればクリアできるクエストではない。
本人がいま自分自身をどう感じているのかは、本人にしかわからない。
ただ、長く在宅で眺めてきたオタクにも見えることはある。
自分の好きなもの、自分が時間をかけてきたものについて、「これは人に見せられるものかもしれない」という手応えを、彼女はいくつも掴んできたように見えた。
喋る人から、誰かを喋らせる人へ
もう一つ、大きいのが「喋ること」だ。
矢久保美緒は『生のアイドルが好き』でMCを務め、『タイムちゃん』では長くラジオに出演し、『矢久保の部屋』では乃木坂46のメンバーを迎えて話を聞いた。
ここで面白いのは、単に「トークが得意になった」という話ではないことだ。
『矢久保の部屋』を見ていると、彼女自身が面白いだけではなく、相手の面白さを拾うことが仕事になっている。
特に後輩である5期生を扱う回では、「この子にはこういうところがある」と見つけ、それを視聴者に渡す役割をしていた。
アイドルが好きで、細かいところを見るのが好きで、それについて喋るのが好き。
その「好き」が、いつの間にか誰かを紹介する能力になっていた。
これは卒業した瞬間に消えるものではない。
むしろグループという枠を離れたことで、使える範囲は広くなる。
たとえば新しい所属先には高嶺のなでしこがいる。
矢久保美緒が彼女たちのレッスンやライブに密着して、メンバーの話を聞く。
そんな企画があったら、TWIN PLANETにとっては所属タレントの紹介になるし、矢久保美緒にとっては一つのコンテンツになる。そして少なくとも私は見る。
つまり彼女は、演者であると同時に、誰かを面白く見せる広報役にもなれるかもしれない。
これはなかなか便利な人である。
乃木坂46から何を持って出てきたのか
もちろん、だから矢久保美緒は必ず成功する、という話ではない。
芸能活動なんて、本人の能力だけで決まるものではないだろうし、数年後には今とは全然違うことをやっているかもしれない。
この記事を書いている時点で私に見えるのは、もっと小さなことだ。
矢久保美緒は、乃木坂46の7年間を終えて、手ぶらで外へ出てきたわけではなかった。
美容について研究してきた時間がある。
ファッションを自分の表現に使ってきた経験がある。
何年もマイクの前で喋ってきた。
アイドルを見て、好きになって、その魅力を言葉にしてきた。
そしてその一つ一つについて、「私はこれが好きだ」と言えるだけの物語がすでにある。
乃木坂46という名前そのものを次の場所へ持っていくことはできなくても、そこで育てた「矢久保美緒」は、そのまま持っていける。
TWIN PLANETが公開したプロフィールを見る限り、新しい事務所もそこをかなり丁寧に見てくれているように思える。
まったく別の矢久保美緒を作るのではなく、すでにあるものの続きを一緒に考えている。
少なくとも、いまのところはそう見える。
いま見えている景色
矢久保美緒が卒業すると聞いたとき、私はそれほど悲しくなかった。
アイドルではなくなったとしても、この人なら自分の人生をちゃんとやっていけるだろう、とどこかで思っていたからだ。
だから芸能活動が続くと知った今の気持ちも、「よかった」というのとは少し違う。
まだ続きを見られるんだ。
それくらいの、ちょっとした儲けものなのである。
彼女が7年間の活動を通して、確固たる自信を得たのかは知らない。
むしろ、まだ確かめてみたいことがあるから、この仕事を続けるのかもしれない。
それも知らない。
ただ、自分の中にあるものが誰かに届くという手応えを、彼女がいくつも持って次の場所へやってきたことは、外から見ていてもわかる。
坂道を登ったから、立派な人間になったという話ではない。
登っているあいだに、見える景色が増えた。
美容も、ファッションも、喋ることも、アイドルを好きでいることも、その景色の中にある。
そして新しい所属先も、どうやら同じ景色を見てくれているらしい。
矢久保美緒がこの先どこへ向かうのかは、まだわからない。
だからこそ、これは未来予想ではなく、現在地の記録である。
坂道を登った矢久保美緒が、いま見ている景色。
いまの私には、こんなふうに見えている。
――ちなみに新しい所属先には、私の先代乃木坂推し・能條愛未もいる。
参考
▶乃木坂46公式ブログ
※矢久保美緒の乃木坂46公式ブログは卒業後に閉鎖されたため、一部は保存アーカイブ・転載ページを参照
・矢久保美緒「タコチャンッ」(乃木坂46 4期生ブログ、2019年6月19日/現・SBA Archive)
https://www.sakamichi.co/nogi/blogs/51238
・矢久保美緒「だって今の私は今消えちゃう」(乃木坂46 4期生ブログ、2020年1月3日/現・SBA Archive)
https://www.sakamichi.co/nogi/blogs/54300
・矢久保美緒「言葉の力」(乃木坂46公式ブログ、2022年1月13日/現・SBA Archive)
https://www.sakamichi.co/nogi/blogs/65032
・矢久保美緒「この瞬間を無駄にはしない」(乃木坂46公式ブログ、2023年10月4日/保存転載)
https://hpn1.net/archives/954
▶乃木坂46公式「乃木坂46時間TV・電視台『矢久保美緒』を公開!」(2022年3月31日)
https://www.nogizaka46.com/s/n46/news/detail/65405
▶テレビ朝日「『乃木坂46』矢久保美緒が卒業発表『新たにやってみたいこと見つけました』」(2025年10月22日)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_geinou/articles/900176225.html
※2026年10月22日現在、記事の掲載期間終了を確認。
▶BUBKA Web「『アンダーライブを好きでいてください』乃木坂46卒業の矢久保美緒が、アイドル人生を捧げたアンダラのステージで伝えた言葉の重み」(2025年12月)
https://www.idol-culture.jp/geinou/203594/
▶Real Sound「乃木坂46 4期生、それぞれの個性を発揮した冠番組」(2020年6月)
https://realsound.jp/2020/06/post-576969_2.html

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